
動物の姿に変えられた人物が天の星座になる。男が作った女性の彫像が命を得て男の妻になる。こうしたストーリーの神話が世界のいろいろな文化に伝わっている。空間的にも時間的にもかけ離れた多くの文化に伝わる神話の粗筋が驚くほど似通っているのはなぜなのか? 神話の歴史を解き明かすため,新たな研究モデルが開発された。進化生物学の考え方に基づいた統計的ツールを利用する。系統解析によって作成した系統樹から,個別の神話の“種”が徐々に進化したこと,人類がアフリカから世界に拡散した大規模な移住と軌を一にして広がったことが明らかになった。先史時代の文化を覗き見る窓にもなりそうだ。
著者
Julien d’Huy
仏パリ第1大学の博士課程の大学院生。アフリカ世界研究所(IMAF)と共同で行っている彼の学際研究は,神話の比較解析に進化論とコンピューターモデルを利用している。
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「幸福の手紙に潜む進化のルール」,C. H. ベネット/M. リー/B. マ,日経サイエンス2003年9月号。
ポッドキャスト著者のデュイが神話の進化について語っている。
How Myths Evolve over Time and Migrations
原題名
The Evolution of Myths(SCIENTIFIC AMERICAN December 2016)
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