日経サイエンス  2017年4月号

特集:運動と健康

運動のパラドックス なぜやせられないのか

H. ポンツァー(ニューヨーク市立大学ハンター校)

身体を活発に動かしている人はより多くのカロリーを燃やしている,というのが旧来の見方だ。だが,肉体的にきつい生活を送っている昔ながらの狩猟採集民も便利な近代的生活をしている人々も,実際に消費しているカロリーは同じであることが示された。この意外な発見は,大きな脳など多くのエネルギーを消費する形質がどのように進化したのかに関していくつもの疑問を提起した。大型類人猿とエネルギー消費を比較した結果,ヒトはそうした形質を支えるために効率的な代謝の仕組みを進化させたことが浮かび上がってきた。スポーツジムで運動してもなかなかやせられないのは,この効率的な代謝のためなのかもしれない。

 

 

関連動画The Evolution of Human Metabolism
著者のポンツァーによる人間の代謝の進化に関する講演のビデオ

 

 
再録:別冊日経サイエンス237「食と健康」
再録:別冊日経サイエンス225「人体の不思議」

著者

Herman Pontzer

ニューヨーク市立大学ハンター校(ハンターカレッジ)の人類学者。ヒトと大型類人猿のエネルギー消費を調べ,人間の生理・体格の進化に関する仮説を検証している。

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美食が人類を進化させた」,W. R. レナード,日経サイエンス2003年3月号。

原題名

The Exercise Paradox(SCIENTIFIC AMERICAN February 2017)

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