
うまくいけば人類にバラ色の未来を提供してくれる核融合発電。国際共同研究プロジェクト「ITER」や米国の国立点火施設「INF」で大規模な核融合炉の開発が進められているが,技術的にも資金的にも前途は多難だ。そんな不透明な状況の中で,物理学者らのベンチャー企業が相次いで核融合研究に参入し,新風を吹き込んでいる。核融合反応を起こし点火させるための新しいアイデアを掲げ,投資家が資金提供する。より小型で単純な核融合炉を低コストで開発できると主張し,競争を繰り広げている。もちろんプラズマ制御で未知の物理現象が障害になるかもしれないし,実用上の課題も多い。ただリターンを考えるとチャレンジをする価値があるといえる。
著者
W. Wayt Gibbs
シアトルを拠点とするフリーの科学ライターで編集者。SCIENTIFIC AMERICANの寄稿編集者で,核分裂(核融合ではない)発電に取り組む子会社を有する研究・投資会社インテレクチュアル・ベンチャーズの論説員。
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「核融合炉は本当に可能か?」,M. モイヤー,2010年6月号。
原題名
The Fusion Underground(SCIENTIFIC AMERICAN November 2016)