日経サイエンス  2017年3月号

新発見! 文化が促すシャチの種分化

R. リーシュ(ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校)

新たな生物種が出現するのは,祖先種が地理的な障壁によって2つの集団に隔離されて交配できなくなり,独自の進化の道をたどるからだとされてきた。ところが,これがすんなり当てはまらない例が見つかった。世界の海に生息するシャチは,集団を隔離する地理的障壁がないにもかかわらず,体形や行動パターンが異なるほか互いにはまず交配しない複数の集団(エコタイプ)に分かれている。近年の研究から,餌の獲得法などに関する文化的な違いが“隔離障壁”として働いていることが示された。現在は1つの生物種に分類されているシャチだが,これらのエコタイプは遠からず別の種に進化するとみられる。

 

 

再録:別冊日経サイエンス226「動物のサイエンス 行動,進化,共存への模索」

 

著者

Rüdiger Riesch

ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校で進化生物学の講師を務めている。生物多様性を創出・維持・制限しているメカニズム,特に個体集団が新たなニッチに入った結果として生じる種分化を研究している。

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シクリッドの進化」,A. メイヤー,2015年8月号。

原題名

Species in the Making(SCIENTIFIC AMERICAN November 2016)

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