日経サイエンス  2017年3月号

ドラマチックだった太陽系形成

L. T. エルキンズ=タントン(アリゾナ州立大学)

米航空宇宙局(NASA)は先頃,太陽系天体の新たな探査ミッション2つを決定したと発表した。その1つが,全体が金属でできた奇妙な小惑星プシケの探査だ。つい5年ほど前まで,太陽系の惑星は微小な粒子を出発点に,一定ペースで比較的ゆっくり物質の凝集が進み,大きく成長してできたと考えられていた。それが近年,初期太陽系の名残である隕石の研究から,実際には混沌とした状態の中での衝突と溶融,再形成を経て誕生した可能性が示唆された。この新説を立証する狙いで立案されたのがプシケの探査だ。プシケは初期太陽系の激しい天体衝突でできた,原始惑星の金属の中心核がむき出しになった天体である可能性がある。

 

 

再録:別冊日経サイエンス223「地球外生命探査」に改題して収録

 

著者

Linda T. Elkins-Tanton

岩石タイプの惑星の進化を専門に研究する惑星地質学者。アリゾナ州立大学地球・宇宙探査大学院のディレクターを務める。

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解き明かされる小惑星の世界」,E. アスファウ,2000年8月号。
太陽系 混沌からの誕生」,K. バティギンほか,2016年8月号。

原題名

Solar System Smashup(SCIENTIFIC AMERICAN December 2016)

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