日経サイエンス  2017年2月号

ごきぶりゾンビ 捕食寄生の神経科学

C. ウィルコックス(ハワイ大学)

エメラルドゴキブリバチという熱帯性のハチは,ぎょっとする手段を使ってわが子を育てる。生きたゴキブリに卵を産みつけ,そのゴキブリを孵化してきた幼虫の餌にする。「捕食寄生」と呼ばれる生活環だが,特にこのハチはゴキブリを麻痺させて利用するために,特別な“毒液”をゴキブリの脳に注入し,行動と代謝を変えてしまう。ゾンビ化したゴキブリは,なすすべもない。このほかにも多くのハチが複雑な毒液を用いてクモやイモムシに捕食寄生している。なかには他の捕食寄生バチの幼虫に捕食寄生する例まである。毒液の神経作用を含め,進化が生んだグロテスクではあるが驚きに満ちた生存戦略を紹介する。

 

 

関連動画Watch a Wasp Take Control of a Cockroach’s Brain
エメラルドゴキブリバチがゴキブリを操る様子

著者

Christie Wilcox

ハワイ大学の細胞生物学・分子生物学のポスドク研究員。生物の毒液が専門。ブログ執筆など科学コミュニケーターとしても活動している。

【関連記事】
脳をあやつる虫」,R. サポルスキー,2003年6月号。

原題名

Zombie Neuroscience(SCIENTIFIC AMERICAN August 2016)

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