日経サイエンス  2017年2月号

絶滅危惧種の移住を手助け 生物の引っ越し大作戦

R. コニフ(サイエンスライター)

ニュージーランドの岩の小島にすむムカシトカゲという爬虫類に異変が起こっている。このトカゲの性別は卵の段階で地面の温度によって決まり,涼しいとメスに,暖かいとオスになるのだが,地球温暖化のあおりでオスの比率が70%以上になっている。これが85%にまで高まると,集団は崩壊するという。このように気候変動によって多くの生物種の生息地の状況が変わり,そのままでは存続が危うくなっている。絶滅を回避するため,これらの生物をかつて生息したことのない場所へ移転する策が真剣に検討されるようになった。移転は当の生物種と移転先生態系の両方にリスクを伴うが,絶滅を避けるには最善の方法なのかもしれない。

 

 

再録:別冊日経サイエンス226「動物のサイエンス 行動,進化,共存への模索」

 

著者

Richard Conniff

サイエンスライター。多くの雑誌に執筆しているほか,New York Times紙の非常勤オピニオンライターを務めている。著書に「House of Lost Worlds」(エール大学出版局,2016年),『新種発見に挑んだ冒険者たち』(邦訳は青土社,2012年)など。

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どの生物を守るべきか」,M. ネイハイス,2013年1月号。

原題名

Home off the Range(SCIENTIFIC AMERICAN October 2016)

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