日経サイエンス  2017年2月号

エルニーニョを追跡する

E. ベッカー(米海洋大気庁)

エルニーニョが発生すると日本は暖冬・冷夏になるといわれる。太平洋の向こうでは,米国西海岸の冬は湿潤に,米国東北部は暖冬になるとされる。そうした傾向は確かなのだが,実際の天候パターンは必ずしも一貫しない。例えば2015年から2016年にかけてのエルニーニョは観測史上で3本の指に入る強さだったが,カリフォルニア州南部に見込まれた大雨が降らず,干ばつ緩和は期待はずれに終わった。このエルニーニョ発生から終息までの推移を詳しく追跡すると,各地域の天気への影響を予測するのが一筋縄ではいかない理由が見えてくる。海洋と大気は複雑に相互作用しており,地球温暖化などが影響を及ぼしている可能性もある。

 

 
関連情報
Fleet of Sensors Heads into the Heart of El Niño
航空機や船舶,観測気球を用いてエルニーニョを追跡する方法を紹介した解説記事(英語)
 

 
再録:別冊日経サイエンス240「気候大異変 いま地球で何が起こっているのか」

著者

Emily Becker

メリーランド州カレッジパークにある米海洋大気庁(NOAA)気候予測センターのリサーチサイエンティストで,気象の分析と予測を専門にしている。エルニーニョやラニーニャなどの気象を追跡するNOAAのブログを毎月執筆している。

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異常気象を招く 暴れるジェット気流」,J. マスターズ,2015年3月号。

原題名

On the Trail of El Niño(SCIENTIFIC AMERICAN October 2016)

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