日経サイエンス  2017年1月号

特集:人新世を考える

120歳時代 健康寿命を延ばす道

B. ギフォード(サイエンスライター)

これまでで最も長生きした人は,とあるフランスの女性で,1997年に122歳で亡くなった。現在最高齢の男性はイスラエルに住む112歳。こうした百寿者は普通の人よりも老化が実際に遅いようだ。極端なカロリー制限が細胞の寿命に影響することが示され,食事制限で誘導される細胞機構が寿命を延ばすカギを握っていることがわかってきた。これらの経路を薬で活性化すれば,空腹感なしに同じ効果を得られるだろう。糖尿病治療薬や抗がん剤などの中にはこれらの機構に働きかけるものがあり,抗老化薬としての効果を評価する臨床試験が始まろうとしている。分裂・増殖を停止した「老化細胞」を除去する方法も追求されている。

 

 

再録:別冊日経サイエンス231「アントロポセン──人類の未来」
再録:別冊日経サイエンス225「人体の不思議」

著者

Bill Gifford

サイエンスライター。著書に老化の科学に関する「Spring Chicken: Stay Young Forever (Or Die Trying)」がある。

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驚異の長寿因子ラパマイシン」,D. スティップ,2012年4月号。

原題名

Living to 120(SCIENTIFIC AMERICAN September 2016)

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