日経サイエンス  2017年1月号

特集:時空と量子もつれ

ホログラフィー原理を解く

エンタングルメント・エントロピーと笠・高柳公式

中島林彦(編集部) 協力:大栗博司(米カリフォルニア工科大学/東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構) 高柳匡(京都大学基礎物理学研究所)

ブラックホールが持つエントロピーの奇妙な性質にヒントを得て,「ホログラフィー原理」が提唱された。重力を含まない2次元空間から,重力を含む3次元空間が生み出されるという考えだ。超弦理論の研究でホログラフィー原理のモデル,「AdS/CFT対応」が見つかり,2次元空間からの3次元空間の生成に,「量子もつれ(エンタングルメント)」という量子力学的な現象がカギを握ることもわかってきた。量子もつれでは「エンタングルメント・エントロピー」という物理量が重要で,「笠・高柳公式」という計算手法によって研究が大きく進展した。

 

 

再録:別冊日経サイエンス229「量子宇宙 ホーキングから最新理論まで」

著者

中島林彦 / 協力:大栗博司 / 高柳 匡

中島は日経サイエンス編集長。 大栗はカリフォルニア工科大学カブリ冠教授,同大学ウォルター・バーク理論物理学研究所長,東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員。専門は素粒子論,主に超弦理論を研究。一般向けの著書も多く,重力関連では『重力とは何か』(幻冬舎新書)がある。

高柳は京都大学基礎物理学研究所教授。専門は超弦理論,場の量子論,量子重力。笠・高柳公式のもう1人の提唱者である笠真生氏とともに,2013年西宮湯川記念賞を受賞した。2016年11月には,第62回仁科記念賞の単独授賞が発表された。

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