日経サイエンス  2016年11月号

塩水で農業

M. ハリス(科学技術ライター)

 世界の灌漑農地の1/4近くは,不適切な灌漑法のせいで塩害に侵されている。また数千万ヘクタールの農地が,海面上昇による塩水侵入の危機にある。こうした高塩分の場所で作物を育てることができたら,今後増加が予想される世界人口を養う食料を供給できるかもしれない。このため,海沿いの湿地などに茂る特殊な「塩生植物」をまねて,耐塩性の遺伝子をイネなどに導入して改良する方法が開発された。例えば米カリフォルニア大学のチームはアルファルファからトウジンビエ,ピーナツ,イネまで,数千株の様々な遺伝子導入植物を育てて実験している。ただ一方では,遺伝子改変による予期せぬ影響を懸念する声もある。

 

 

再録:別冊日経サイエンス222「食の未来 地中海食からゲノム編集まで」
【関連動画】遺伝子改変による耐塩性作物に関する講演のビデオ(英語)Crops That Grow in Salty Water

著者

Mark Harris

シアトルを本拠に活動する科学技術ライター。本誌2015年8月号に「氷を壊し気候を揺さぶる北極海の大波」を執筆した。

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海水で砂漠を農場に」,E. P. グレン/J. J. ブラウンほか,日経サイエンス1998年11月号。

原題名

Saltwater Solution(SCIENTIFIC AMERICAN July 2016)

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