日経サイエンス  2016年11月号

特集:宇宙の超巨大構造

宇宙で最も空っぽな場所 スーパーボイド

I. ザプーディ(ハワイ大学)

 宇宙を満たす太古の光である宇宙マイクロ波背景放射(CMB)には,謎の領域「コールドスポット」が存在する。温度が異常に低い領域だ。コールドスポットの方向に巨大な低密度領域「スーパーボイド」が存在すれば,コールドスポットを説明できる可能性がある。スーパーボイドを通過するCMB光子はいわゆる積分ザックス・ウォルフェ(ISW)効果によってエネルギーを失い,その温度が下がるだろう。このISW効果は宇宙が加速膨張しているために生じる。最近,コールドスポットの方向に差し渡し18億光年のスーパーボイドが発見された。このスーパーボイドがCMBのコールドスポットの原因かどうかを判定するにはもっと多くのデータが必要だ。

 
 
再録:別冊日経サイエンス241「巨大ブラックホール 宇宙と銀河の進化を探る」(改題)

【関連動画】The Pigeon, the Antenna and Me: Robert Wilson:宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の発見について発見者の1人ウィルソンが語るビデオ

著者

István Szapudi

ハワイ大学天文学研究所の天文学者。宇宙論と宇宙の大規模構造を研究している。

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宇宙の調べは狂っている? 背景放射の奇妙なズレ」,G. D. シュタルクマン/D. J. シュワルツ,日経サイエンス2005年11月号。

原題名

The Emptiest Place in Space(SCIENTIFIC AMERICAN August 2016)

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