
小惑星は太陽系が誕生した当時の物質をそのままとどめている名残であり,惑星の形成や生命の起源に関する長年の謎を解くカギを握っている。日本の探査機「はやぶさ」は小惑星イトカワから微量のサンプルを持ち帰り,現在「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに向かっているが,米国が9月に打ち上げる「オシリス・レックス」が目指すのはベンヌという小惑星だ。サンプルリターンによる科学研究が主眼ではあるが,ベンヌは悪くすると22世紀後半に地球と衝突する恐れがあり,万一に備えてリスク評価と対策に役立つデータを集める狙いもある。また,小惑星に存在する金属や水,有機物質を資源として利用する可能性も探る。
著者
Dante S. Lauretta
アリゾナ大学の惑星科学の教授。ハビタブル惑星の形成や地球外生命の可能性を研究している。家族とともにソノラ砂漠の自然美のなかをマウンテンバイクで走るのが楽しみ。
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原題名
The Seven-Year Mission to Fetch 60 Grams of Asteroid(SCIENTIFIC AMERICAN August 2016)
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オシリス・レックス/ベンヌ/サンプルリターン/ラブルパイル天体/レゴリス/宇宙風化作用/ヤルコフスキー効果/地球近傍小惑星