日経サイエンス  2016年9月号

言語学バトル 印欧語族の起源をめぐって

M. バルター(サイエンスライター)

英・独・仏語にイタリア語,ポルトガル語,ロシア語,ギリシャ語,ヒンディー語などなど,世界人口の半数近くは「インド・ヨーロッパ語族」に属する言語を話している。これら各国語の共通祖先はインド・ヨーロッパ祖語という古代言語だが,この祖語はいつどこで成立したのか? 言語学者は長らく,いまから5000〜6000年前に中央アジアの草原地帯から騎馬遊牧民が各地へ広めたと考えてきた。これに対し別の仮説は,約8000年前,現在のトルコあたりから農耕民が農業とともに広めたとみる。旧来の言語学者と考古学者に加え,近年は生物学者と古代のDNA解析の専門家が参入して激しい論争を繰り広げているが,勝負はついていない。

著者

Michael Balter

フリーランスのサイエンスライター。Audubon,National Geographic,Scienceなど各誌に執筆。世界最大級の古代都市であるトルコのチャタルフユク遺跡の発掘についてまとめた著書「The Goddess and the Bull」(Free Press,2005年)がある。

原題名

Language Wars(SCIENTIFIC AMERICAN May 2016)

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