日経サイエンス  2016年9月号

痒みの科学

S. サザーランド(サイエンスライター)

急性の痒みには,虫や有毒植物を避けるよう警告する役割がある。虫刺されなどお馴染みのケースでは,皮膚で免疫細胞が作動してヒスタミンという化学物質を放出している。しかし慢性的な痒みは,なぜかはっきりした原因なしに生じることが多い。近年に研究が大きく進展し,痒みの分子メカニズムについて多くのことがわかってきた。ヒスタミン以外の様々な痒み物質が特定され,それらをとらえる特定の受容体,その受容体が存在する神経細胞の種別が判明した。痒みを専門に感じるセンサーと神経経路の存在がはっきりし,痒みと痛みの関係も明確になった。急性と慢性の双方の痒みに対する新たな治療法の開発につながるだろう。




再録:別冊日経サイエンス250「『病』のサイエンス」

著者

Stephani Sutherland

南カリフォルニアを拠点とする神経科学者,サイエンスライター。

【関連記事】慢性疼痛を鎮める新アプローチ」 S. サザーランド,日経サイエンス2015年8月号。

原題名

The Maddening Sensation of Itch(SCIENTIFIC AMERICAN May 2016)

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