日経サイエンス  2016年8月号

太陽系 混沌からの誕生

K. バティギン(カリフォルニア工科大学) G. ラフリン(カリフォルニア大学サンタクルーズ校) A. モルビデリ(仏コートダジュール天文台)

 太陽系以外の惑星系がたくさん発見されるにつれ,太陽系の構成がかなり特異であることがわかってきた。多くの惑星系では,太陽系でいえば水星よりもさらに主星に近いところに惑星が存在する。また太陽系の惑星の公転軌道は円に近いが,多くの惑星系では,かなりいびつな楕円軌道になっている。こうした特異性を最もよく説明できるのは,数十億年前,巨大ガス惑星である木星と土星の軌道が大移動し,太陽系全体が不安定になったとする説だ。この激動の時代には,惑星が太陽に落ち込んだり,逆に太陽系を飛び出して星間空間まで弾き出されたりしたようだ。こうした大変動がなかったら地球での生命の誕生と進化は起きなかったかもしれない。

 

著者

Konstantin Batygin / Gregory Laughlin / Alessandro Morbidelli

バティギンはカリフォルニア工科大学の惑星科学の准教授。主な研究テーマは惑星系の形成と進化など。研究から離れている時はギターから騒音を出して楽しんでいる。ラフリンはカリフォルニア大学サンタクルーズ校の天文学と天体物理学の教授。専門は系外惑星の探査とその特性の研究。www.oklo.orgで惑星(非常に広い意味での)に関する人気ブログも執筆中。モルビデリはフランス・ニースにあるコードダジュール天文台を拠点とする惑星科学者。フランスとベルギーの科学アカデミーの会員で,太陽系の進化における様々な段階の有力なモデルを生み出している。

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原題名

Born of Chaos(SCIENTIFIC AMERICAN May 2016)

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