
自己免疫疾患は数多い。多発性硬化症やバセドウ病,Ⅰ型糖尿病など特定の臓器で発症するもののほか,関節リウマチや全身性強皮症など全身に症状が出る病気もある。いずれも本来,外敵だけを攻撃する生体防御の仕組みに異常が起き,自分の細胞までも殺傷するためと考えられている。この反応を抑えれば治療につながるはずだ。大阪大学免疫学フロンティア研究センターの坂口志文特任教授は免疫の仕組みの不思議さに引き込まれ,カギとなる「制御性T細胞」を発見した。自己免疫疾患,さらには各種のがんに対する新しい治療法を切り開くとして期待が膨らんでいる。
著者
永田好生
日本経済新聞編集委員。科学技術分野を幅広く取材している。