日経サイエンス  2016年8月号

特集:量子コンピューター

量子暗号が登場する日

T. フォルジャー(サイエンスライター)

オンライン取引でやり取りされる情報やオンライン通信は,大きな数の素因数分解をベースにした暗号によって守られている。従来のコンピューターではこのような暗号を解読できない。 しかし,量子コンピューターが登場すれば,現在の暗号は破られてしまう可能性が高い。量子コンピューターは,原子より小さな世界の不可思議なルールを活用して大規模な並列計算を行うことが可能だ。 実用的な量子コンピューターはまだ存在しない。しかし,大学や国の研究機関,民間企業の研究者がその開発に挑んでおり,10年ほどで成功するだろうと話す専門家もいる。それゆえ,量子特有の性質を用いて原理的には盗聴不可能な通信を実現する量子暗号技術の完成と一般社会への展開が急務となっている。

 

著者

Tim Folger

サイエンスライター。National Geographic 誌やDiscover 誌などに執筆しているほか,ホートン・ミフリン・ハーコート社が毎年出版している「The Best American Science and Nature Writing」の編集者でもある。

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「量子暗号」,G. H. ベネット/G. ブラザード/A. K. エカート,日経サイエンス1992年12月号。
実用段階に入った量子暗号」,G. スティックス,日経サイエンス2005年4月号。別冊日経サイエンス161『不思議な量子をあやつる』に収載。

原題名

The Quantum Hack(SCIENTIFIC AMERICAN February 2016)

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