
実用に耐える大規模な量子コンピューターを作るのは難しい。一般に,粒子が多く集まると量子力学的な振る舞いが見られなくなり,古典的法則に従うようになるからだ。解決策の1つは,小さな量子コンピューターをたくさん作り,その量子的性質を乱さない程度の最小限のリンクでつなぐことだと考えられるようになった。「モジュール量子計算」と呼ばれるアプローチだ。最近,様々なタイプの量子ビットを使った小規模モジュールのテストが成功しており,大規模化への道が開かれてきた。
関連動画:量子コンピューターについての解説ビデオ
著者
Christopher R. Monroe / Robert J. Schoelkopf / Mikhail D. Lukin
モンローはメリーランド大学の物理学教授で,メリーランド大学と米国立標準技術研究所(NIST)などの共同研究機関である量子合同研究所のフェロー。20 年以上にわたって量子情報技術の最前線で活躍している。ショルコフはエール大学の物理学教授でエール量子研究所の所長。彼らエール大学のチームは量子コンピューター向けの固体量子ビットの開発を先導している。ルーキンはハーバード大学の物理学教授で,マサチューセッツ工科大学とハーバード大学の共同研究機関である極低温原子センターの共同センター長。量子計算や量子通信,量子計測の分野で先駆的な貢献をしてきた。
関連動画
「ダイヤモンドで実現するスピントロニクス」,D. D. オーシャロム/R. エプスタイン/R. ハンソン,日経サイエンス2008年1月号。
「イオンで作る量子コンピューター」,C. R. モンロー/D. J. ワインランド,日経サイエンス2008年11月号。
原題名
Quantum Connections(SCIENTIFIC AMERICAN May 2016)