
「状態の重ね合わせ」や「量子もつれ」という量子世界の不思議な現象を活用して膨大な計算を一挙にこなす──そうした量子コンピューターの実現はまだ遠い先だと考えられていたが,認識は大きく変わってきた。壊れやすい量子状態を乱さずに多数の量子ビットをつなぐ「モジュール量子計算」の試みが進展したためだ。量子ビットとして原子・イオン,超電導回路,結晶欠陥を利用する方法を紹介する。早ければ10年後にも実用的なマシンが登場するかもしれない。そうなるとオンライン取引などで現在広く使われている暗号は破られてしまう。これに対抗できるのはやはり量子の力。原理的に盗聴不可能な通信を実現する量子暗号技術の開発が急ピッチで進んでいる。
難関を突破するモジュール量子計算
C. R. モンロー/R. J. ショルコフ/M. D. ルーキン
量子暗号が登場する日 T. フォルジャー
量子暗号研究 日本の最前線を見る 武岡正裕