
「人類月に立つ」。アポロ計画は20世紀の科学技術を象徴する偉業だった。その宇宙服とピカピカのバイザーは過酷な環境から宇宙飛行士を守るハイテクのしるし──と思いきや,博物館に保存されている宇宙服が劣化し,バイザーにヒビが入りつつある。素材のプラスチックから腐食性の成分がしみ出し,劣化が始まったのだ。デザイナー家具や映画のフィルム,ベークライト製アクセサリー,ポップアート時代に作られた彫刻やアクリル画など,近代の文化遺産の多くはプラスチックでできている。これらが台なしになっては大変だ。背景の化学的メカニズムを考慮して,劣化の兆しを早期検出する技法や,崩れていく作品を修理する方法の開発が始まった。
著者
Sarah Everts
Chemical & Engineering News誌のベルリン特派員。科学と保存修復に関する記事を多数執筆しており,現在は汗の科学に関する本を執筆中。
【関連記事】When Art Falls Apart
原題名
The Art of Saving Relics(SCIENTIFIC AMERICAN April 2016)
サイト内の関連記事を読む
キーワードをGoogleで検索する
アポロ計画/ネオプレン/ポリカーボネート/マイクロエマルション/可塑剤/塩化ビニール樹脂/ポリウレタン/ニトロセルロース/アセチルセルロース/フーリエ変換赤外分光計/ベークライト/界面活性剤/原子間力顕微鏡