日経サイエンス  2016年7月号

脳から老廃物を排出 グリンパティック系

M. ネーデルガード S. A. ゴールドマン(ともにロチェスター大学)

人間の脳の重量は約1400gで体重の約2%を占めるにすぎないが,活動に伴うエネルギー消費で見ると全身の20~25%に上り,その過程で有害なタンパク質老廃物などのゴミが大量に生じている。1年足らずで脳の重さと同程度の老廃物を除去しているのだが,どのように? 脳には老廃物を運び出すリンパ系がないと信じられてきたが,著者らは近年の研究で同種の導管システムを発見した。この「グリンパティック系」は睡眠中に最も活発に働く。脳を健全に保つためにも睡眠は重要なのだろう。アルツハイマー病やパーキンソン病など,脳に有害なタンパク質が蓄積する神経疾患を治療する重要な手がかりになりそうだ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス218 「脳科学のダイナミズム 睡眠 学習 空間認識 医学」

 

著者

Maiken Nedergaard / Steven A. Goldman

ネーデルガードはロチェスター大学医療センターとデンマークのコペンハーゲン大学でグリア細胞を研究している。グリア細胞のなかでも特に注目しているのは,様々な神経疾患に関係しているアストロサイトだ。ゴールドマンはロチェスター大学医学・歯学部とコペンハーゲン大学の神経科学と神経学の教授。

原題名

Brain Drain(SCIENTIFIC AMERICAN March 2016)

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