
熊本地震では日奈久断層帯と布田川断層帯が連続的に動き,最大震度7の大地震が相次いで起きた。これらの断層帯は西日本を縦断する日本最大の中央構造線断層帯を構成している。地震活動は日奈久,布田川の両断層帯から中央構造線断層帯に沿って九州中部を横断する形で広範囲に拡大した。この地域は別府湾から島原湾にかけて存在する帯状の大地の凹み「別府・島原地溝帯」でもあり,阿蘇山などの火山が集中することから,火山活動への影響にも注意する必要がある。中央構造線断層帯と別府・島原地溝帯の地震火山活動は,フィリピン海プレートが陸側プレートの下に沈み込む動きがおおもとにある。今回の地震活動は,同じくフィリピン海プレートの沈み込みで生じる巨大な「南海トラフ地震」に至る1つのステップとみることができる。
再録:別冊日経サイエンス217 「大地震と大噴火 日本列島の地下を探る」
著者
中島林彦 / 協力:清水 洋/巽 好幸/西村卓也
中島は日経サイエンス編集長。清水は九州大学理学研究院教授で同大学附属地震火山観測センターのセンター長を務める。別府・島原地溝帯を中心に九州の地震火山活動を研究している。巽は神戸大学大学院理学研究科教授で同大学附属海洋底探査センターのセンター長を務める。地球科学とマグマ学が専門で日本列島の形成史にも詳しい。現在は超巨大噴火(カルデラ噴火)の研究に注力している。西村は京都大学防災研究所地震予知研究センターの准教授。GNSSなどの測地学的手法による観測データを用いて,日本列島の地下で生じる地震などの断層運動やマグマの移動による火山現象などを探っている。
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