日経サイエンス  2016年6月号

CRISPRと「組み換え」作物 バイオ農業の行方

S. S. ホール(サイエンスライター)

新たに開発されたCRISPR(クリスパー)という遺伝子編集技術によって,これまでにない精度で生物のゲノムを改変できるようになった。操作が簡単で費用もかからないので,農業関連の大企業だけでなく小さなベンチャー企業でも,この強力な新技術を活用できる。新技術の推進者は,過去何千年も続いてきた伝統的な育種法よりも植物を乱す影響が少ないと主張している。米国の規制当局も同様の見方だ。外来遺伝子を導入する在来技術と特定の遺伝子を改変する新技術の違いは,「遺伝子組み換え作物」の定義を含め,組み換え食品に関する規制の行方を変える可能性がある。消費者がどう感じるかは未知数だ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス222「食の未来 地中海食からゲノム編集まで」

 

著者

Stephen S. Hall

数々の受賞歴があるサイエンスライター。近著は「Wisdom: From Philosophy to Neuroscience」(クノッフ出版,2010年)。

原題名

Editing the Mushroom(SCIENTIFIC AMERICAN March 2016)

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