
中性子は原子核に安定した状態で収まっているが,例えば原子炉内でウランが核分裂反応を起こしたりすると,中性子は原子核から飛び出して単独の状態になる。こうした自由中性子は不安定で,比較的短時間でベータ崩壊を起こして陽子と電子などに変わる。自由中性子がベータ崩壊するまでの寿命を世界最高レベルの精度で測定する2つの実験が行われたが,結果にかなりの食い違いが生じている。両者の食い違いの原因を突き止めることは,宇宙の根幹に関わる謎を解き明かすために極めて重要な意味を持つ。
著者
Geoffrey L. Greene / Peter Geltenbort
グリーンはテネシー大学の物理学教授で米国立オークリッジ研究所の核破砕中性子源の研究リーダーも兼務。中性子の性質を40年以上研究してきた。ゲルテンボルトはフランスのグルノーブルにあるラウエ・ランジュバン研究所の研究員。同研究所にある世界最高レベルの強度を誇る中性子源を利用して中性子の基本的性質を研究している。
原題名
The Neutron Enigma(SCIENTIFIC AMERICAN April 2016)
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