日経サイエンス  2016年6月号

特集:生物のGPS

空間認識のカギ握る グリッド細胞

M.-B. モーザー E. I. モーザー(ともにノルウェー科学技術大学)

周囲の目印に対する自分の現在位置を把握する能力は重要だ。それがなければ,個人の生存はおろか,人類の生存も危うくなる。脳の深部にある神経細胞ネットワークが協力して,周辺環境を表す「脳内空間地図」を作製している。ある場所に来たときに発火する「グリッド細胞」や「場所細胞」,特定の方向を向いたときに発火する「頭方位細胞」,壁や囲いの縁など何らかの境界に接近すると発火する「境界細胞」,移動の速さに反応する「スピード細胞」などだ。これらの神経細胞はGPSさながらの働きをしている。ルート探索に関与している脳領域は,新しい記憶の形成とも密接に関連している。

 

 

再録:別冊日経サイエンス218 「脳科学のダイナミズム 睡眠 学習 空間認識 医学」

 

著者

May-Britt Moser / Edvard I. Moser

ともにノルウェー科学技術大学の心理学と神経科学の教授。2人は2007年にカブリ統合脳科学研究所を,2013年に神経計算モデルセンターを同大学内に設立した。脳の測位システムを発見した功績で,2014 年ノーベル生理学・医学賞を英ロンドン大学ユニバーシティカレッジのオキーフとともに受賞した。

原題名

Where Am I? Where Am I Going?(SCIENTIFIC AMERICAN January 2016)

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