日経サイエンス  2016年6月号

特集:生物のGPS

編集部

周囲の目印に対する自分の現在位置を把握する能力がなければ,動物は生きていけない。脳の深部にある神経細胞が協力して,周辺環境を表す「認知地図」を作製している。これらの神経細胞はGPSさながらの働きをし,新しい記憶の形成とも密接に関連しているようだ。このネットワークの重要な一員である「グリッド細胞」の発見で2014年のノーベル生理学・医学賞を共同受賞したモーザー夫妻が,脳のナビゲーションシステムについて解説,テキサス大学の神経生物学者クニエリムがこの発見の持つ大きな意義を詳説する。

 

一方,動物の身体を構成する複雑な組織や器官ができあがるには,個々の細胞も自分が身体の他の部分に対してどちらを向いているかを“知って”いなければならない。それを可能にしている「平面内細胞極性」の仕組みが見えてきた。細胞に極性を与えている重要なタンパク質がいくつか特定され,メカニズムの解明が進んでいる。

 

 

空間認識のカギ握るグリッド細胞  M-B. モーザー/E. モーザー
脳内マトリックスの衝撃  J. J. クニエリム
動物の発生で働く細胞のコンパス 平面内細胞極性

P. N. アドラー/J. ネイサンズ

 

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