
うつ病や統合失調症といった精神疾患は
脳の画像や血液検査などを使った客観的な診断ができない
分子や細胞レベルの研究からこの状況の打破を目指す
アルツハイマー病やパーキンソン病などは「神経変性疾患」と呼ばれ,脳に異変が起きている。一方で,統合失調症や躁うつ病(双極性障害)は,同じく脳に何かが起きているはずだが「精神疾患」と呼ばれ,ときには“こころの病気”とも表現される。何が違うのだろう? 理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チームの加藤忠史シニアチームリーダーの答えは明快だ。「今はまだ脳の病変部を突き止められていないだけ。これがわかれば,診断にも役立つ」。加藤は,精神疾患の患者の脳で何が起きているのかを突き止め,血液検査や脳の画像写真などでも診断がつくようにしたいと考えている。 (文中敬称略)
加藤忠史(かとう・ただふみ)理化学研究所脳科学総合研究センター副センター長。1963年東京生まれ。東京大学医学部を卒業後,滋賀医科大学精神医学講座助手,アイオワ大学精神科での文部省在外研究員,東京大学医学部附属病院講師などを経て,2001年より理化学研究所脳科学総合研究センター(理研BSI)に。2009年に精神疾患動態研究チーム・シニアチームリーダー。2015年より副センター長を兼任。