日経サイエンス  2016年4月号

福島第1原発の炉心をみる

吉川和輝(日本経済新聞社)

5年前,東北地方を襲った巨大地震による大津波で東京電力福島第1原子力発電所の6基の原子炉のうち1号機から3号機まで3つの炉でメルトダウン(炉心溶融)が起きたとみられている。廃炉を進める上で,溶け落ちた核燃料の取り出しが最大の課題だが,その所在が不明だ。そこで空から降り注いでいるミュー粒子という素粒子をX線のように使って,事故を起こした炉の内部を写し出す試みが進んでいる。これまでの調査で1号機の炉心部は空で,核燃料が完全に溶け落ちたことがわかった。2号機も大部分の核燃料が溶け落ちたことが判明した。今後は新開発の装置を使って,溶融した核燃料が存在するとみられる原子炉底部を探る計画だ。

著者

吉川和輝

日本経済新聞社編集委員。科学技術分野を幅広く取材している。

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

ミュォグラフィ福島第1原子力発電所シンチレーター原子核乾板炉心溶融核燃料デブリ廃炉メルトダウンミュー粒子