日経サイエンス  2016年3月号

病原体ナノセンサー

S. O. ケリー(加トロント大学)

一般に感染症を確定診断するための病理検査には数日かかる。血液や尿といった試料に含まれるマーカー分子(病原体のDNAなど)がわずかで,検出が難しいためだ。この数日のタイムラグの間に,患者は誤った薬を処方されたり病状が悪化したり,致命的な感染症の場合には命を落としかねない。これに対し著者のグループは,血液を1滴たらすだけで20種類ほどの細菌感染の有無をわずか20分ほどでいっぺんに判定できるプローブを開発した。超微細な構造を利用して感度を高めたのがミソで,近く臨床試験を始める。ナノテクを活用した同様の医療用センサーがこのほかにも開発されており,医療の現場を大きく革新することになりそうだ。

 

 

【ポッドキャスト】Let’s Get Small: A Panel on Nanoscience(英語)

著者のケリーを含む科学者がナノテクを応用した診断技術などを解説した講演の録音
 

 
再録:別冊日経サイエンス238「感染症 ウイルス・細菌との闘い」

著者

Shana O. Kelley

カナダのトロント大学で化学・生化学・薬学・生体医工学のディスティングイッシュトプロフェッサーを務めている。この記事で述べられている技術を商業化するザジェニック(Xagenic)の取締役で,同社の株式を保有。

原題名

Disease Detector(SCIENTIFIC AMERICAN November 2015)

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