日経サイエンス  2016年3月号

特集:子どもの脳と心

集中学習の窓 臨界期のパワー

ヘンシュ貴雄(ハーバード大学)

子供の脳は「臨界期」と呼ばれる特定の期間の間に,視覚など様々な能力を発達させる。臨界期の脳は感覚刺激や社会的刺激に対応して柔軟に変化し,その結果が永続的に残る。臨界期は子供時代から青年期にかけての特定の時期に開く窓で,この間に神経の接続が形作られる。脳の可塑性が高い時期だ。臨界期を開始させる分子と終了させる分子について理解が進み,臨界期のタイミングを操って成人後に可塑性を復興する手段が得られた。いずれは薬品などの医学的処置によって後年になってから臨界期を再び始動させて,初期発達段階で生じた問題を修正できるようになるだろう。



再録:別冊日経サイエンス259『新版 認知科学で探る心の成長と発達』
再録:別冊日経サイエンス218 「脳科学のダイナミズム 睡眠 学習 空間認識 医学」

著者

Takao K. Hensch

ハーバード大学医学部とボストン小児病院の神経学の教授。ハーバード大学脳科学センターの分子・細胞生物学の教授を兼任している。

原題名

The Power of the Infant Brain(SCIENTIFIC AMERICAN February 2016)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

臨界期可塑性γアミノ酪酸(GABA)パルブアルブミン陽性大型バスケット細胞興奮性ニューロンペリニューロナルネットヒストン脱アセチル化酵素阻害剤アセチルコリンセロトニン