日経サイエンス  2016年3月号

特集:子どもの脳と心

10代の脳の謎

J. N. ギード(カリフォルニア大学サンディエゴ校)

豊かな発想力を示す一方で,無謀な行動をとりがちな10代。その理由は脳のアンバランスな成長過程にあることがわかってきた。脳はニューラルネットワークの増強によって発達していくが,感情を生み出す大脳辺縁系のネットワークが思春期に強化されるのに対し,冷静な判断を促す前頭前皮質は20代になるまで成熟しない。このミスマッチがティーンエイジャーを危険な行動に駆り立てているとみられる。思春期の開始時期は世界的に早まる傾向にあるため,ミスマッチの期間は長くなっている。親や社会が成長期の脳の特徴を理解することで,子どもの行動が異常なものかどうかを見きわめ,子ども自身の将来設計に役立てることができる。

再録:別冊日経サイエンス259『新版 認知科学で探る心の成長と発達』
再録:別冊日経サイエンス218 「脳科学のダイナミズム 睡眠 学習 空間認識 医学」

著者

Jay N. Giedd

カリフォルニア大学サンディエゴ校の小児青年精神医学科長で,ジョンズ・ホ プキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生学部の教授を兼任。また,Mind, Brain, and Education誌の編集長を務めている。

原題名

The Amazing Teen Brain(SCIENTIFIC AMERICAN June 2015)

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大脳辺縁系前頭前皮質可塑性青年期