
イタリア南部のオリーブ園で,昆虫が媒介するキシレラ・ファスティディオーサという細菌が広まっている。当局はこの菌によってオリーブの木が枯死しているとみて,蔓延を防ごうと木々を切り倒している。だがキシレラ菌がどのように木を害するのか,専門の科学者も把握し切れていない。農家は科学者と当局が結託して,オリーブの木々を不必要に伐採していると訴える。殺虫剤の使用と適切な農法によって病害拡大を抑えられる可能性もあるが,殺虫剤の広域散布には農家の反発が強い。疑心暗鬼のせいで陰謀論まで流布しており,事態は混迷を深めている。この病気がさらに広まった場合,地中海のオリーブオイル産業に大打撃が及ぶ恐れがある。
再録:別冊日経サイエンス214「人類危機 未来への扉を求めて」
再録:別冊日経サイエンス222「食の未来 地中海食からゲノム編集まで」
著者
Barbie Latza Nadeau
1996年からローマを拠点に活動している米国人ジャーナリスト。著書に「Angel Face: The True Story of Student Killer Amanda Knox」(ビーストブックス,2010年)がある。
原題名
The Battle of Olives(SCIENTIFIC AMERICAN November 2015)
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キシレラ・ファスティディオーサ/ホソアワフキ/木部/ピアス病