日経サイエンス  2016年2月号

特集:古代エジプトの社会と科学

冥界のナビゲーター 棺に描かれた天体運行表

S. サイモンズ(加マクマスター大学) E. タスカー(北海道大学)

古代エジプト人は夜空の星の動きに格別の注意を払っていた。その観測記録が,約4000年前の棺の内側に表として記されているのが見つかった。特定の星が夜間に東の地平から空に昇る順序を,1週ごと年間にわたって示しているらしい。しかし,いったい何に使われていたのか? 夜間の適切なタイミングで宗教儀式を執り行うための一種の時計として使われたのだと長らく考えられてきたが,近年の研究は別の可能性を示している。実は,星々のめぐる冥界に入った死者を導くための地図だったのかもしれない。

著者

Sarah Symons / Elizabeth Tasker

サイモンズはカナダのオンタリオ州にあるマクマスター大学の准教授でウィリアム・J・マカリオン・プラネタリウムの館長。科学史と科学教育を研究している。古代エジプトの天文学に関する研究はカナダ社会科学・人文科学研究評議会の支援による。タスカーは北海道大学の助教。サイエンスコミュニケーションのほか,銀河と恒星,惑星の形成をコンピューターシミュレーションを用いて研究している。

スライドショー Surprising New Finds from Ancient Egyptian Star Charts
棺に記された星座表

原題名

Stars of the Dead(SCIENTIFIC AMERICAN October 2015)

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