
食糧生産に不可欠で,水素エネルギー利用でも注目されるアンモニア
現在は高温高圧が必要だが,常温常圧で合成できるようになれば
世界レベルで省エネルギーが実現,新エネルギーの普及にも弾みがつく
窒素肥料の原料となるアンモニアは,70億人を超える世界人口を支えるために不可欠だ。20世紀初めに発明されたハーバー・ボッシュ法は,そのアンモニアを空気中の窒素と工業生産した水素から合成,多くの人を飢えから救い,20世紀最大の発明とまでいわれる。しかし高温高圧の反応を用いるので,現在,アンモニア生産のために世界のエネルギーの数%が消費され,温暖化ガスを大量に発生させている。西林仁昭は常温常圧下で進む省エネルギー型の反応を発見,環境負荷が軽い21世紀のアンモニア合成の実用化に取り組む。(文中敬称略)
西林仁昭(にしばやし・よしあき) 東京大学大学院工学系研究科総合研究機構・特任准教授。1968年大阪府生まれ。1995年京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員,東京大学助手,京都大学助手を経て2005年東京大学助教授,准教授,2015年10月より現職。科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)の研究代表者を兼務。