日経サイエンス  2016年2月号

フロントランナー 挑む 第56回

常温常圧のアンモニア合成でエネルギー資源革命:西林仁昭

小玉祥司(日本経済新聞シニア・エディター)

食糧生産に不可欠で,水素エネルギー利用でも注目されるアンモニア
現在は高温高圧が必要だが,常温常圧で合成できるようになれば
世界レベルで省エネルギーが実現,新エネルギーの普及にも弾みがつく

 

 

窒素肥料の原料となるアンモニアは,70億人を超える世界人口を支えるために不可欠だ。20世紀初めに発明されたハーバー・ボッシュ法は,そのアンモニアを空気中の窒素と工業生産した水素から合成,多くの人を飢えから救い,20世紀最大の発明とまでいわれる。しかし高温高圧の反応を用いるので,現在,アンモニア生産のために世界のエネルギーの数%が消費され,温暖化ガスを大量に発生させている。西林仁昭は常温常圧下で進む省エネルギー型の反応を発見,環境負荷が軽い21世紀のアンモニア合成の実用化に取り組む。(文中敬称略)

 

 

再録:「挑む!科学を拓く28人」

 

西林仁昭(にしばやし・よしあき)
東京大学大学院工学系研究科総合研究機構・特任准教授。1968年大阪府生まれ。1995年京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員,東京大学助手,京都大学助手を経て2005年東京大学助教授,准教授,2015年10月より現職。科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)の研究代表者を兼務。

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