日経サイエンス  2016年1月号

特集:ビッグサイエンスを問う

疫学の手法で殺人を減らす

R. ゲレーロ・ベラスコ(コロンビアのカリ市の市長)

 疫学で使われているデータ解析手法を応用して,暴力犯罪の根本的原因と最善の対策を明らかにすることができる。南米コロンビアのカリ市はこの方法によって,人口10万人あたり124人だった殺人事件の犠牲者をわずか3年で同86人に減らした。同国の首都ボゴタでは9年間で同80人から20人に減った。銃と酒に関する法規制が不可欠だった。警察の影響力を強め,若者に社会的活動の場と仕事を与えることも重要だった。現在,中南米の多くの都市が定期的に会議を開いて犯罪データを解析し,対策を計画し,その効果を評価している。

著者

Rodrigo Guerrero Velasco

2012年以降,南米コロンビアのカリ市の市長を務めている。1992〜1994年にも同職にあった。1期目を務めた後は全米保健機構(PAHO)に勤務し,ゲリラと麻薬の不法栽培が横行しているコロンビアの地方に経済事業を創出するためにVallenPaz(バイェンパス)を立ち上げるのに助力した。

原題名

An Antidote for Murder(SCIENTIFIC AMERICAN October 2015)