日経サイエンス  2016年1月号

特集:ビッグサイエンスを問う

ヒト脳プロジェクト混迷の教訓

S. タイル(ジャーナリスト)

 欧州委員会(欧州連合の政策執行機関)は2013年,人間の脳のシミュレーターを開発するという神経科学者マークラムの提唱による大胆な研究プロジェクトに13億ドルを拠出することを決めた。この「ヒト脳プロジェクト(HBP)」は現在,大混乱にある。プロジェクトの管理体制と,あまりにも野心的すぎる目標設定が批判されている。だがむしろ,科学よりも政治を重視し十分な監督を怠ったブリュッセルの欧州委員会に責がある。米国のBRAINイニシアティブは神経科学のビッグプロジェクトが成功しうることを示しており,HBPはまさにそれに向けて再編成されつつある。

著者

Stefan Theil

ベルリンを拠点とするジャーナリスト・編集者。ハーバード大学ジョアン・ショー レンスタインセンターのフェロー。

原題名

Trouble in Mind(SCIENTIFIC AMERICAN October 2015)

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ヒト脳プロジェクト BRAINイニシアティブ