日経サイエンス  2015年12月号

緊急特集:ノーベル賞ダブル受賞!

微小な質量の巨大なインパクト

中島林彦(編集部)

東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章博士がニュートリノの研究でノーベル物理学賞を受賞する。原子核の反応で生じるニュートリノは幽霊のような素粒子だ。物質を構成する粒子グループに属するが,他の物質粒子とほとんど相互作用しない。そのため,人体でも岩石でも果ては天体でも素通りする。また他の物質粒子は質量を持つが,ニュートリノは1950年代,原子炉を用いた米国での実験で初検出されて以来,様々な実験によっても質量が確認できなかった。標準モデルではニュートリノの質量はゼロであるとして理論が構築されていた。その常識が覆ったのが1998年のこと。飛騨山中の神岡鉱山にある東京大学宇宙線研究所の実験施設スーパーカミオカンデが1996年に稼働,自然界のニュートリノを約2年間観測した結果,ニュートリノが質量を持つことで起こる「ニュートリノ振動」という現象が捉えられた。梶田博士はこのニュートリノ振動の発見で中心的な役割を果たした。

著者

中島林彦

日経サイエンス編集長

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