
東京大学宇宙線研究所長の梶田隆章博士がニュートリノの研究でノーベル物理学賞を受賞する。原子核の反応で生じるニュートリノは幽霊のような素粒子だ。物質を構成する粒子グループに属するが,他の物質粒子とほとんど相互作用しない。そのため,人体でも岩石でも果ては天体でも素通りする。また他の物質粒子は質量を持つが,ニュートリノは1950年代,原子炉を用いた米国での実験で初検出されて以来,様々な実験によっても質量が確認できなかった。標準モデルではニュートリノの質量はゼロであるとして理論が構築されていた。その常識が覆ったのが1998年のこと。飛騨山中の神岡鉱山にある東京大学宇宙線研究所の実験施設スーパーカミオカンデが1996年に稼働,自然界のニュートリノを約2年間観測した結果,ニュートリノが質量を持つことで起こる「ニュートリノ振動」という現象が捉えられた。梶田博士はこのニュートリノ振動の発見で中心的な役割を果たした。
著者
中島林彦
日経サイエンス編集長
サイト内の関連記事を読む
キーワードをGoogleで検索する
ニュートリノ振動/ノーベル賞/物理学賞/梶田隆章/戸塚洋二/小柴昌俊/スーパーカミオカンデ/カミオカンデ/太陽ニュートリノ/大気ニュートリノ/カムランド/K2K実験/標準モデル