
騒音の激しい工場や大音響のコンサートが聴覚障害を引き起こすことがある。騒音性難聴といわれ,大きな音によって聴覚の閾値が上昇し,普通の会話などが聞き取りにくくなる。内耳の有毛細胞に損傷がなければ,聴力はやがて回復すると考えられてきた。ところが最近の研究から,有毛細胞が無傷でも,その先につながる聴神経のシナプスが騒音によって破壊されると,有毛細胞との接続が断たれ,回復不能の難聴に陥ることがわかってきた。聴覚閾値の検査では“正常”な結果が出ることから,「隠された難聴」とよばれる。著者らは神経栄養因子を用いた治療法を探る一方,聴神経を守るために騒音への注意を呼びかけている。
【関連動画】How Hearing Works
著者
M. Charles Liberman
ハーバード大学医学部の耳科学と喉頭学の教授で,マサチューセッツ眼科耳鼻科病院のイートン・ピーボディ研究所の所長を務める。耳の内部と脳をつなぐ経路を研究している。
原題名
Hidden Hearing Loss(SCIENTIFIC AMERICAN August 2015)
サイト内の関連記事を読む
キーワードをGoogleで検索する
難聴/騒音/蝸牛/有毛細胞/聴神経/シナプス/オージオグラム/騒音下語音聴取検査/聴性脳幹反応(ABR)