日経サイエンス  2015年11月号

特集:大地の変動を探る

箱根山 大涌谷噴火を読み解く

中島林彦(編集部) 協力:大場 武(東海大学)

  箱根山の大涌谷で6月末に小規模な噴火が起きた。5月初めに蒸気井の暴噴,4月末に群発地震が始まっていたが,噴気の分析によると,噴火につながる地下の異変は2月には始まっていたようだ。 大涌谷の地下約10kmにマグマ溜まりがあり,そこから上昇してきたマグマ性ガスが地下数百mの熱水溜まりに供給されている。噴気の成分の変動から考えると2月頃からガスの上昇ルートに目詰まりが生じ,地下数kmあたりでガスが蓄積したことが今回の噴火をもたらしたとみられる。箱根山と同じような古い火山では同様のメカニズムで噴火が起きている可能性があり,昨秋の御嶽山噴火もその1つと考えられる。

 

 

再録:別冊日経サイエンス217 「大地震と大噴火 日本列島の地下を探る」

 

著者

中島林彦 / 協力:大場 武

中島は日経サイエンス編集長。大場は東海大学理学部教授。専門は火山化学と地球化学。特に火山性ガスと火山活動との関連に興味がある。1986年,アフリカ・カメルーンのニオス湖で火山ガス由来の大量のCO2が爆発的に放出され,約2000人が死亡する火口湖ガス災害が起きたが,その再発を防ぐ研究プロジェクトの代表も務める。

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