
去る1月,南極ロス棚氷の付け根に深さ740mの縦穴が掘られ,氷の下で陸地が海と接している領域が調べられた。縦穴から送り込まれた無人機は,氷の下にある厚みわずか10mの深海に,バターナイフくらいの大きさをした半透明の魚など,いくつかの動物を発見した。外海から850kmも離れ,太陽光の届かない暗闇に微生物以外の生き物がいたのは驚きだ。この魚は小さな甲殻類を,その甲殻類は微生物を餌にしており,その微生物は氷の天井が解けて中から落ちてきた有機堆積物の屑を食べているようだ。今回の発見は,これまで生命はすめないと思われていた隔絶された場所にも生命が存在する可能性を示している。地球外生命がいる候補とされる木星の衛星エウロパなどについても同じことがいえる。
著者
Douglas Fox
サイエンスライター。Discover,Esquire,National Geographic,Natureなど各誌に執筆している。2007年以降,取材のため南極を4回訪れた。
原題名
Life at Hell’s Gate(SCIENTIFIC AMERICAN July 2015)
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ロス棚氷/端脚類/珪藻/コオリイワシ/ウィランズ湖/ボストーク湖