
20世紀最高の物理学者の1人で,2008年にノーベル賞を受賞した南部陽一郎博士が7月5日,死去した。博士は素粒子物理学の礎である「対称性の自発的破れ」の提唱者で,クォークどうしを結びつけて陽子などを作る「強い力」を記述する「量子色力学」のパイオニアでもあった。「超弦理論」の源流も博士にある。10年先を見通すとも評されるその先見の明から「素粒子物理学の予言者」と呼ばれた。超弦理論研究で世界的に知られるカリフォルニア工科大学の大栗博司教授は若手研究者時代,シカゴ大学の南部博士の研究室で助教授を務め,博士に身近に接した。大栗教授に南部博士を偲ぶ記事を急きょ寄稿いただいた。
著者
大栗博司
カリフォルニア工科大学カブリ冠教授,同大学ウォルター・バーク理論物理学研究所長,東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究員。専門は素粒子論,主に超弦理論を研究している。シカゴ大学時代,南部陽一郎氏の研究室の助教授を務めた。一般向けの著書も多く,近著は『数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学』(幻冬舎,2015年)。
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南部陽一郎/ノーベル賞/対称性の自発的破れ/超弦理論/量子色力学/イジング模型/ベーテ-サルピーター方程式