日経サイエンス  2015年10月号

特集:暗黒物質に異説

すばるが見た暗黒宇宙

中島林彦(編集部) 協力:宮崎 聡/八木雅文(ともに国立天文台)

正体はわからないものの,暗黒物質(ダークマター)が私たちの身の回りや町の中,太陽系の空間,天の川銀河,さらには宇宙全体にわたって存在することは確実だ。星のように遙か彼方にあるのならともかく,身の回りに存在しているのなら,つかまえられてもよさそうだが,いまだに成功していない。現実には,手の届かない星の世界,それも太陽系や天の川銀河よりもさらに遠く離れた宇宙に存在する暗黒物質の方がよく捉えられ,研究が進んでいる。現在,世界の数多くの大型望遠鏡が暗黒物質の観測を重点テーマにしている。暗黒物質はまったく見ることができないが,その莫大な質量によって生ずる重力が,天体の運動や天体の見え方などに影響を及ぼしており,そうした影響を望遠鏡で調べると宇宙に潜む暗黒物質が浮かび上がる。この暗黒物質観測で大きな存在感を示しているのが,ハワイ島マウナケア山頂(標高約4200m)にある国立天文台の口径約8mの「すばる望遠鏡」だ。つい最近も暗黒物質関連の2つの重要研究成果が相次いで発表された。すばるは宇宙のダークサイドを覗き見る窓になっている。

著者

中島林彦 / 協力:宮崎 聡/八木雅文

中島は日経サイエンス編集長。宮崎は国立天文台先端技術センター准教授でHSC銀河サーベイのリーダー。HSCの開発で中心的役割を果たした。八木は国立天文台光赤外研究部助教。主に銀河進化を研究している。かみのけ座銀河団はフィールドの1つ。

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