日経サイエンス  2015年10月号

特集:暗黒物質に異説

ダーク銀河の謎

B. A. ドブレスク(米国立フェルミ加速器研究所) D. リンカーン(米国立フェルミ加速器研究所)

宇宙には,現に見えているよりも多くの物質がなければならない。見えない暗黒物質(ダークマター)探しは,目標を1種類の見えない粒子に絞っていたが,20年以上の実験でも見つかっていない。「エキゾチック」な暗黒物質候補が正解かもしれない。暗黒物質は1種類の粒子ではなく,通常の物質とはほとんど相互作用しない複数種類の粒子で,それらは何種類かの未知の力によって相互作用している可能性がある。暗黒物質粒子が結びついてダーク原子やダーク分子をなし,さらにそれが集まって隠れた銀河円盤をなし,天の川などの渦巻銀河の腕に重なっているかもしれない。そんな暗黒物質の証拠を探す実験がいくつか進行中だ。

 

 

【関連記事】What if Dark Matter Is Stranger Than We Thought?

著者

Bogdan A. Dobrescu / Don Lincoln

ドブレスクは近年,米国立フェルミ加速器研究所で素粒子理論物理学を研究,新しい粒子とその相互作用に注目している。フェルミ研の大型加速器を用いたニュートリノの特性を調べる実験で暗黒物質が生じ,それがニュートリノ検出器で観測できる可能性を調べてきた。リンカーンはフェルミ研の上席物理学者で,CERNの大型ハドロン衝突型加速器LHCで得られたデータで研究を行っている。一般向けの科学書が何点かあり,近著は「The Large Hadron Collider: The Extraordinary Story of the Higgs Boson and Other Stuff That Will Blow Your Mind」 (ジョンズ・ホプキンズ大学出版局,2014年)。

原題名

Mystery of the Hidden Cosmos(SCIENTIFIC AMERICAN July 2015)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

暗黒物質ダークマターWIMPダーク電荷ダーク光子部分的に相互作用する暗黒物質LHC