日経サイエンス  2015年9月号

ギャップ結合 聞こえてきた細胞の会話

D. W. レアード(加ウェスタンオンタリオ大学) P. D. ランペ(フレッド・ハッチンソンがん研究センター) R. G. ジョンソン(ミネソタ大学)

私たちの体を構成する細胞どうしは様々な方法で情報交換している。血流に乗って伝わるホルモンはその一例だ。神経細胞は化学物質の一種を介して情報を伝える。これらとは別に,ほぼすべての細胞は,自分の内部と隣の細胞の内部を直接つなぐ通路の集合体,「ギャップ結合」を通じて情報をやりとりしている。いわば細胞どうしの“直接会話”で,例えば心臓においては心筋細胞の拍動の同調など,組織ごとに様々な働きをしている。このギャップ結合の遺伝子変異が皮膚疾患や心疾患,てんかん,難聴などの疾患をもたらすことがわかってきた。これらの変異がギャップ結合の構築と活性にどう影響するのかがわかれば,新しい治療法につながる。

 

【関連動画】ギャップ結合を通じて色素が隣の細胞に広がる様子

 

 

再録:別冊日経サイエンス213「生命解読2 細胞から個体へ」

著者

Dale W. Laird / Paul D. Lampe / Ross G. Johnson

レアードはカナダのウェスタンオンタリオ大学の細胞生物学教授。ギャップ結合と疾患のカナダ政府研究教授も務める。ランペはシアトルにあるフレッド・ハッチンソン・がん研究センターのトランスレーショナルリサーチプログラムの共同代表で,公衆衛生学部門およびヒト生物学部門のメンバー。ジョンソンはミネソタ大学の遺伝学,細胞生物学ならびに発生学の名誉教授。発見間もない1960 年代にギャップ結合の研究を始め,レアードやランペとともに,ギャップ結合の構築と制御に関する研究を20 年以上続けている。

原題名

Cellular Small Talk(SCIENTIFIC AMERICAN May 2015)

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