日経サイエンス  2015年9月号

動物のソーシャルネット

L. A. デュガトキン M. ハーゼンジェイガー(ともにルイビル大学)

人間と同様,多くの動物種が複雑な社会的ネットワークを形作って暮らしており,そのネットワークが個体や群れの行動に影響を与えている。チンパンジーなど霊長類の例が有名だが,近年は人間の社会的ネットワークを研究するために開発された手法を用いてより詳しい研究が進んでいる。雌の気を引くために限られた数の雄だけが歌と踊りを競演するマイコドリ,人間の漁師に協力して魚の追い込み漁をする一部のハンドウイルカなど,社会的ネットワークの構造が繁殖行動や生存手段の伝承に大きな役割を果たしている驚きの実例が明らかになった。群れ全体を健全に保つうえで,ある特定のメンバーが特に大きな影響力を発揮している。

 

 

再録:別冊日経サイエンス227 「鳥のサイエンス 知られざる生態の謎を解く」

著者

Lee Alan Dugatkin / Matthew Hasenjager

デュガトキンはルイビル大学の生物学の教授。約150編の学術論文のほか,「The Altruism Equation: Seven Scientists Search for the Origins of Goodness」「Mr. Jefferson and the Giant Moose: Natural History in Early America」など一般向けの著作もある。ハーゼンジェイガーはデュガトキン研究室の博士課程の学生。動物の社会的ネットワークを学位論文のテーマとして研究している。

原題名

The Networked Animal(SCIENTIFIC AMERICAN June 2015)

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