渋滞や混雑がない世の中の実現を夢見て
応用数学の成果を基盤とする日本発の新たな学問「渋滞学」を創始
活躍の場は道路交通から鉄道,航空へと大きく広がる
人,モノ,情報があふれ,ときに不愉快な渋滞が起きてしまうのは現代文明の特質であり,損失でもある。西成活裕は新しい学問分野「渋滞学」を提唱,どうすれば渋滞や混雑がない世の中を実現できるか模索している。(文中敬称略)
きれいにそり上げたスキンヘッドに濃い眉毛と口ひげ──。印象的な風貌で弁舌さわやかに論じるので,テレビのバラエティー番組などでは引っ張りだこだ。講演依頼は年間50~70件。週1回のペースで1日2件ということもある。
研究室は東京大学の駒場第2キャンパスと本郷キャンパスにあり,現在23人が所属。学生は14人,社会人が9人と社会人が多いのが特徴で,証券会社を辞めて飛び込んできたメンバーもいる。居室にはビートたけしとの共演を記念するツーショット写真が飾られている。人と車と物流と,効率の良い仕事の進め方の4つを研究の柱に据えている。
西成活裕にしなり・かつひろ) 東京大学先端科学技術研究センター教授。1967年東京都生まれ。95年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。山形大学と龍谷大学,独ケルン大学を経て2005年東京大学准教授。09年から現職。『渋滞学』(新潮選書)で講談社科学出版賞と日経BPビズテック図書賞を受賞。趣味はオペラのアリアを歌うこと。小椋佳作詞作曲のCD「ムダとりの歌」で歌手デビューもしている。