日経サイエンス  2015年8月号

慢性疼痛を鎮める新アプローチ

S. サザーランド(科学ライター)

腰痛や頭痛,関節炎などの慢性的な痛みに苦しむ人は一般の想像以上に多い。米国の場合,がんと心臓病,糖尿病の患者の合計よりも多く,経済的な損失でも上回っている。慢性疼痛は治療が難しく,特に神経性の痛みは一般的な抗炎症薬がほとんど効かない。モルヒネなどのアヘン製剤は急性の激痛には有効だが,深刻な副作用のリスクを伴う。より安全で効果の高い薬の開発は長らく壁にぶつかっていたが,いまやその状況は変わり始めている。ある種のイオンチャネルなど疼痛だけに関与する分子経路が発見され,新薬開発の新たな標的が明らかになった。次世代の鎮痛剤として,動物の毒液に含まれる物質も試験されている。

 

 

【関連動画】Research Reveals the Structure of a Molecular Gateway to Pain



再録:別冊日経サイエンス250「『病』のサイエンス」

著者

Stephani Sutherland

南カリフォルニアに拠点を置く神経科学者,科学ライター。

原題名

Pain That Won’t Quit(SCIENTIFIC AMERICAN December 2014)

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