日経サイエンス  2015年8月号

特集:クォークの世界

支配者グルーオンの謎

R. エント(米国立トーマス・ジェファーソン加速器施設) T. ウルリッヒ(米国立ブルックヘブン研究所) R. ベヌゴパラン(米国立ブルックヘブン研究所)

物質はクォークという素粒子が集まってできており,クォークどうしはグルーオンという素粒子で結びついている。クォークとグルーオンの働きはかなりよくわかってきたが,まだいくつかの謎が残っている。例えば,原子核を構成する陽子と中性子の質量とスピンに,これら粒子を構成するクォークとグルーオンの質量やスピンがどのように関与しているのかがよくわかっていない。また,クォークとグルーオンはカラー(色荷)を持っているのに,陽子と中性子にカラーはない。陽子や中性子の内部を従来にない時間的・空間的な分解能で探る実験が構想されている。クォークとグルーオンがどのように相互作用しているのかを解明する有力な手がかりが得られるだろう。

著者

Rolf Ent / Thomas Ullrich / Raju Venugopalan

エントはバージニア州ニューポートニューズにある米国立トーマス・ジェファーソン加速器施設で1993年から研究している。現在,実験核物理学の副部門長で,ハドロンと原子核のクォーク・グルーオン構造を探る複数の実験のリーダー。ウルリッヒは2001年に米国立ブルックヘブン研究所に入り,エール大学でも研究・教育に携わっている。専門はクォーク・グルーオン・プラズマで,最初はスイス・ジュネーブ近郊の欧州合同原子核研究機構(CERN)で,後にブルックヘブンでいくつかの実験に取り組んできた。現在は電子・イオン衝突型加速器EICの実現に力を注いでいる。ベヌゴパランは米国立ブルックヘブン研究所の原子核理論研究グループのリーダー。高エネルギー状態でのクォークとグルーオンの相互作用を研究している。

原題名

The Glue That Binds Us(SCIENTIFIC AMERICAN May 2015)

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