日経サイエンス  2015年7月号

隠れたパターンを探し出すデータ可聴化

R. コーエン(サイエンスライター)

 「百聞は一見にしかず」というように,人間は視覚に多くを依存している生物だが,実は聴覚には情報処理の点で視覚に勝る優れた特徴がある。目で識別できる光の点滅は毎秒50回から60回くらいまでだが,耳はわずか数ミリ秒間に生じた音の変化を検出できる。つまり時間分解能が高いのだ。これを科学データの解析に生かす試みが進んでいる。数値やグラフのデータを音に変換する「データ可聴化」という手法で,例えば1年分の時系列観測データを数時間の音声ファイルに圧縮して聴くことにより,目では決してとらえられないパターンを耳で検出できる。すでに天文データの解析やがん細胞の識別などに利用が始まっている

 

 

【関連情報】

Detecting Cancer by Sound :がん細胞と通常の細胞の音の違いを聞き分けてみよう

著者

Ron Cowen

ワシントンを拠点に活動するサイエンスライター。

原題名

Sound Bytes(SCIENTIFIC AMERICAN March 2015)

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